人気ブログランキング | 話題のタグを見る


第1回世界遺産検定を受検して          景山誓子

 第一回世界遺産検定を受検しての感想を理事長から報告するようにという要請を受けましたので、私の個人的な感想を述べさせていただきます。

 昨年秋、毎日新聞等で広告され始め、クラブツーリズムが主催し、講談社から3冊のテキストが出版されました。行かれた方もあると思いますが、西新宿のアイランドタワーに、クラブツーリズムのオフィスがあります。そこはラウンジ形式になっており、来訪者に世界各地の観光地を中心に、ビデオや企画旅行についての案内が行われています。近年、世界中に800余り存在する世界遺産めぐりのツアーが人気で、その流れの中で、検定が生まれたのでしょう。

 4月から5回ほどその検定の為のセミナーが開かれ、約5千人の受験者のうち、多くの希望者は大阪、東京の会場で多数受講しました。検定日は6月中旬、発表は7月末日までに各自に郵送されました。
 今回の検定は第一回ということでしたので、ブロンズ賞(60%以上の回答率)、シルバー賞(70%の回答率)だけでした。次回からは、ゴールド賞、マイスター賞と徐々に地域別に、専門をよより進化させ、より深化した完成度の高いものになっていくようです。特に、マイスターあたりになると、プレゼンテーションを専門家の前で行うところまで要求されるので、そこまで進めば、それこそ、その道のプロとして、各分野にも通用するでしょう。

 受験セミナーの講師は筑波大学大学院の世界遺産を専門に研究する部署の大学院生数名と、ユニセフの専門家があたり、案内役にはクラブツーリズムのベテラン旅行企画者が音頭をとって、初めての企画にしては、入念な企画性と専門性、そして将来への展望も具体的であり、旅行業者、大学の専門研究者、出版社、新聞社のいづれものプロが、それぞれの経験的専門性を持ち寄り、テキストの編集、企画、広報活動まで安定し、一貫した態度が見受けられて、安心して受験に望むことが出来ました。(このあたりの企画性、特に将来への展望まで示しているのは検定としては当然でしょうが、留学アドバイザー資格も次のステップ「上級アドバイザー資格」の企画性の貧弱さをもっと検討していくべきだろうと感想を持ちました。これには、やはり教育関係の専門家の貢献無しにはありえないでしょうが、、、)
 
 受験者の顔ぶれは多岐に渡り、若い学生から、OL、一般の主婦、シニア族までです。日本のJTBは世界一の旅行社で、日本人といえば、カメラを提げた団体海外旅行客というイメージがいい意味でも、悪い意味でも世界に定着されて参りましたが、それも、世界第二位を誇る経済大国故の現象でありましょう。何処に行っても日本人旅行者に合うものです。
 最近の旅行者の傾向は、いわゆる観光名所めぐりには飽き足らず、世界遺産のような、全人類が共有する宝物を体験するという「付加価値」が要求されているのです。世界遺産に登録されている物件は現在812件(2006年6月現在)で、文化遺産628(欧州が半分近い)、自然遺産160件、複合遺産24件ですが、その中には危機遺産(戦火や自然災害や開発による)も含まれています。広島の原爆ドームは負の遺産としてアウシビッツとならんで登録されています。
 
 1959年、エジプトでナイル川が世界の注目を集めたアスワンハイダム建築時に、アブシンベル大神殿が水の中に沈んでしまう、、、人類の至宝を守ろうと言う叫びが起こって、国際連合の専門機関であるユネスコがリーダーシップをとって、世界遺産誕生の第一歩となったわけである。年に一度開かれる世界遺産委員会に事前に、ユネスコ内の世界遺産センターに「暫定リスト」を登録申請して決まる。申請は一度に付き、各国2件までです。今年は日本は石見銀山等を申請しております。遺産が登録されると、保有国は全力を挙げて、遺産を維持、保持しなければならない。遺産としての価値が損なわれると、登録は抹消されてしまいます。また、2003年から、「無形文化遺産保護条約」で口承による伝統芸能、社会習慣、儀式等の、無形文化も、有形文化の世界遺産同様に保護していこうとしている。日本の、能楽、人形浄瑠璃、文楽、歌舞伎も登録された。
 
 この検定の勉強をして、私の中で、あらためて、西欧と日本の違い(石の文化、木の文化)が明確になった。そもそもは文化的景観が石の文化で残っている欧州で始まったが、人間は自然を超えるという発想で自然征服をしていったが、この危険性が今では叫ばれていて、21世紀を迎え、地球そのものの命の大切さを環境問題の先進国である欧州から、また大きなムーブメントが起こってきていることが興味深い。現代のテーマは国を超えて、人間と自然との関わりにあるとやっと気づき始めたのだろう。動物の生態系も大きな関心事で、昨年世界遺産に登録された北海道知床は特異な生態系、季節海氷により、海洋生態系と陸上生態系が相互に関係しあうその特異性を認められて、晴れて世界遺産に登録された。その後、観光客が押し寄せたりしたが、、、登録後も日本の世界の宝として見守っていくことが大切だろう。日本には20近い世界遺産が北から南まで長細い日本列島に存在する。世界だけでなく、まず、日本の足元から気をつけてみたいものだ。
 
 また、日本はカンボジアをはじめ、修復技術が優れていて、非常にその分野で世界に貢献している。これ以上の平和的な世界貢献はないだろう。イースター島のモアイ像は日本の援助で立ち上がった。日本政府の開発援助は政治的外交的な手段の部分が多いのであろうが、限りある資源の同じたった一つの地球に住む地球人として、本当の貢献とは、地味ながらも、大切な世界遺産の修復技術や支援にあるのかもしれない。地球という視点と意識がこの勉強から得られた大きな点でした。
 北理事長は、この夏、奥様と米国のグランドキャニオンをはじめ国立公園を巡られました。ルーズベルト大統領が国立公園に指定してから、一切の開発がストップし、イオンデアンのみが存続した大地、、、20億年の地表を見て、いかに人間一人の存在が小さいものであるか、、、「死」は大地と自然を養う一部だという生命の循環も体験出来たと仰られていた。
 
 これからの海外旅行は外国と言う、小さな人間の定めた国境を越えて、まったく未知の異国を看ると言うような見物がてらの物見遊山的な「小我」を捨てて、「大我」に付く、つまり「地球人」という意識でしてみるのも面白いと思う。観光では世界の先端を走っている日本人らしくそういう意識をもっと育てて生きたいものだ。ブランド買い物に走る日本人から、尊敬される日本人に観光客も変化する日も近いと信じています。
 
 因みに、第二次対戦中、京都は戦火を逃れたのはGHQが事前に調査して、この人類の歴史的伝統文化の町は保護した(軍事の重要施設も無かったが)。私の故郷、岡山県倉敷も戦火はなかった。なぜなら、有名な西洋絵画を集めている美術館(大原美術館)が存在したからと聞いている。隣の広島、岡山は大きな被害を受けたにも拘らず、、、、美術は多くの人命を実際に救ったと私は聞いて育った。日本が伝統文化を守り、至る所で遺産を保護することは、かなり、現実的平和にも寄与するものとも、私は信じております。
 
 どうぞ、皆様もお時間が許せば、どうぞ、来年の世界遺産検定を受講されては如何でしょう。留学アドバイザーとして、テキストにもある「環境」についての知識がぐっと進化するきっかけになり、もっと国際的な認識も深化するはずです。

景山誓子
 
by rgkk | 2006-09-04 13:08 | リレーエッセイ
<< RCAクラブ 関西交流会指導... 第19回留学協会セミナー「留学... >>